オミクロン株について
オミクロン株について
11月末に南アフリカで新規の変異株による感染が増えているという衝撃的なニュースが流れてから1週間程度経ちました。
感染のしやすさ、感染した場合に重症化しやすいのか、ワクチンは効くのか、カクテル療法などは効くのか、などは未だ不明な点が多いです。
現時点で分かっている情報を整理してみました。
オミクロン株について
https://www.science.org/content/article/where-did-weird-omicron-come
このScienceのNews記事によると、
1) 50以上の変異があり、うちスパイク蛋白に32の変異がある
2) 感染性を高めるN501Y変異やベータ株と同様のK417NおよびE484Aを有しており、これはワクチン抵抗性を高めると考えられる
という特徴があります。
形からは厄介な変異をたくさん持っているなぁという印象です。
このオミクロン株について、私個人として心配な点は、
1, 感染力が強い
2, ワクチンの効果が低く広がりやすい
3, ワクチンの効果が低く重症化しやすい
4, 従来株に対して行われていた治療が効きにくい
以上の4点の有無です。
では、それぞれについて解説します。
1,感染力が強い
これはありそうです。
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02758-6
このLancetの図を拝借します。
これは、各株の流行開始からの増加について7日間の移動平均をグラフにしたものです。
毎日の感染者数だと土日祝日など検査機関が休みの時に新規感染者数が減りますので増えたり減ったりが慌ただしいグラフになってしまいます。1週間の新規感染者数を平均したものを折れ線グラフにすることで、そうした影響を少なくし、新規の感染者数が増えているのか減っているのかを見やすくするための方法です。
黄緑色のオミクロン株が他の株よりも早く増加しているのが見て取れます。
また、様々なニュース記事からもオミクロン株は感染力が強いと判断されます。
ECDC(European Centre for Disease Prevention and Control:欧州疾病対策センター)は12月3日に、今後数ヶ月以内にEU(欧州連合)/EEA(欧州経済領域)での新型コロナウイルス感染症の原因株がオミクロン株に置き換わるだろうと警鐘を鳴らしています。
2, ワクチンの効果が低く広がりやすい
新型コロナワクチンがオミクロン株に効果があるかについて各メーカーによる検証結果が待たれるところですが、どうやら低くなっている可能性はありそうです。
ちなみに、ワクチンによる感染予防効果が下がると言われているデルタ株ですが、和歌山県の調査によると、デルタ株が猛威を振るった第5波では、2回のワクチン接種が済んだ感染者が他者に感染させた割合は78%、ワクチン接種が済んでいない人では53%と、2回のワクチン接種が済んでいれば自分が罹ったとしても他者へ感染させるリスクを下げることができると報告しています(和歌山県健康推進課資料から和歌山県のHPから見れます)。
私個人としては、この結果がオミクロン株でも同じであって欲しいと考えています。
3,ワクチンの効果が低く重症化しやすい
ワクチン接種関係なく軽症が多いとの報道がありますが、疫学調査の結果が待たれるところです。
デルタ株が流行した第5波ではワクチン2回接種により重症化が防げているという結果が出ていますので(大阪府対策本部会議資料から和歌山県のHPから見れます)、オミクロン株でも同様の結果になって欲しいですね。
4, 従来株に対して行われていた治療が効きにくい
日本で認可されている2種類の抗体療法のうち、ロナプリーブについては当てはまるそうです。しかし、もう一つのソトロビマブでは効果は維持できているそうです。
抗体療法はSARS-CoV-2が体内に入る際にスパイク蛋白が細胞表面のACE2と結合しますが、スパイク蛋白に先に抗体をくっつけることで細胞内に入ること、つまり感染が成立することを防ぐものです。ですので、スパイク蛋白に変異があった場合に効果が落ちることが懸念されます。ちなみに、ロナプリーブは新型コロナの感染者で見つかった抗体ですが、ソトロビマブで使われている抗体は2002〜2003年に流行したSARSの感染者から得られたものだからだそうです。
また、レムデシビルやパクスロビド、モルヌピラビルなどはスパイク蛋白の変異は関係ないので効果は維持できていることが期待できます。
以上4点について解説しました。
オミクロン株について不明な点が多いのは事実ですが、我々が日常生活で取るべき対策は、これまでと同じです。ワクチン、ソーシャルディスタンス、換気、そして手洗いです。